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GIGAスクール構想とは?目的や現状、問題点をわかりやすく解説

タブレット学習とは Written By 長尾 尚子

更新日:

GIGAスクール構想とは?2019年からスタートした文部科学省の教育施策

学齢期もしくは就学を控えたお子さんをお持ちの保護者の方であれば、「GIGAスクール構想」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。

2019(令和元)年に実施が決定し、2021年から全国の小中学校を中心に本格的にスタートした「GIGAスクール構想」は、文部科学省が進める教育施策です。
子供1人につき1台のタブレット端末やノートPCを配布、学校の授業で活用されている現状を知る方は多いですが、GIGAスクール構想が何を目的として始まったのか?メリットは何か?デメリットや問題点はないか?等、取り組みの詳しい内容を知らない方も多いでしょう。

そこで今回は、文部科学省のGIGAスクール構想にスポットを当て、GIGAスクール構想の概要、メリット・デメリット、GIGAスクール構想を受けて教育現場で具体的に行われている事例などをご紹介します。

GIGAスクール構想の目的

GIGAスクール構想は、学校教育にICT(情報通信技術)を活用することで、児童・生徒の一人ひとりが自分自身に合った学習機会を得るための教育施策です
GIGAとは「Global and Innovation Gateway for All」の略。意訳すると、すべての子供たちにグローバルかつ革新的な教育への機会を与える、という意味になります。

【小中学校編】1人1台端末で学校が変わる!(ダイジェスト版)/YouTube

文部科学省のリーフレットによれば、GIGAスクール構想の目的には、以下の2つが挙げられています。

  • 1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備することで、特別な支援を必要とする子供を含め、多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化され、資質・能力が一層確実に育成できる教育ICT環境を実現する
  • これまでの我が国の教育実践と最先端のICTのベストミックスを図ることにより、教師・児童生徒の力を最大限に引き出す

上記をまとめると、「子供たち一人ひとりが個性に合った教育を受けるためにICT環境(情報端末と高速通信)を整備すること」、さらには「それを教育現場に導入し、教師と児童・生徒の能力を引き出すこと」がGIGAスクール構想の大きな目的と言えるでしょう。

このGIGAスクール構想を受けて、全国の公立小中学には2020年度から2021年度にかけて児童・生徒1人1台のノートPCまたはタブレット端末が配布され、2024年現在は、調べ学習のための情報収集や学習発表のためのプレゼン資料作りなど、多方面の教育活動に活用されています。
新型コロナウイルスの流行による休校期間中は、端末と家庭のWi-Fiを利用してオンライン授業を実施した学校もあったのではないでしょうか。

GIGAスクール構想には、日本国内におけるICTの利活用が諸外国と比較して遅れをとっている現状を懸念し、次世代を担う子供たちの情報教育をハードウェアとソフトウェアの両面から強化していく狙いがあります

GIGAスクール構想のメリット・デメリット&問題点

政府主導で進められてきたGIGAスクール構想ですが、施策そのものにどのようなメリット・デメリット(問題点)があるかも、あわせてチェックしておきましょう。

GIGAスクール構想のメリット

GIGAスクール構想のメリット

GIGAスクール構想の推進には、主に以下のようなメリットがあります。

  • 児童生徒および教職員のICT理解度が向上する
  • 児童生徒一人ひとりの学習内容を最適化できる
  • 児童生徒一人ひとりの状況把握が容易になる
  • 教職員および学校の業務効率化に役立つ

GIGAスクール構想の最大のメリットは、児童生徒が学習用の端末を1人1台持つことで、キータッチなどの端末操作、インターネット上の検索スキル、ビデオ会議ソフトやプレゼンソフトの使い方含めICT全般を実体験を通じて体得していける点です。
子供はもちろん、指導する教師がICTへの理解度を高めることで、学校運営にICTを活用するハードルも下がり、学校全体の業務効率を高められるメリットもあります。

公立校における従来型の授業は、どうしてもクラスの最多層や平均層に向けた画一的な内容になりがちでしたが、1人1台端末があれば、児童生徒一人ひとりの学習状況を教師側で把握できるようになります。単元につまずいている子供や、反対に学習内容が易しすぎる子供の状況がわかり、個別のフォローアップにつなげやすいと言えるでしょう。

また、クラス内の連絡をグループチャットで行ったり、提出物をオンラインで回収したりすることで、教師や学校側はプリントの配布や回収作業が不要となり、業務を効率化できる上に、ペーパーレス化も推進できます。

GIGAスクール構想のデメリット&問題点

GIGAスクール構想のデメリット

ICT教育を進めるメリットが大きい一方で、GIGAスクール構想には以下のようなデメリット&問題点も挙げられます。

  • 端末の維持管理や故障時の対応が増える
  • 教職員のICT研修に負担がかかる
  • LAN環境の整備やソフトウェアの更新、機種の入れ替え等に伴う負担が増える
  • 児童生徒がインターネット上の犯罪やトラブルに巻き込まれる可能性がある

まずは、PCやタブレット端末を大量に保管する学校側の維持管理コストの問題が挙げられます。本体や電源ケーブルの保管場所や防犯対策、また、落下や水濡れなどに伴う端末の故障といった破損リスクにも備える必要があるでしょう。
子供が自宅に端末を持ち帰る場合は、使い方や取り扱い方法について保護者と連携し、同意を得ることも必要です。

さらに、ICT知識を十分に持たない教員のための研修やマニュアル整備も不可欠となり、学校・教員本人ともに負担が増えます。

校内の通信ネットワーク環境を整備する必要があるのはもちろん、年度の変わり目には児童生徒が持つアカウントの更新作業も必要です
なお、GIGAスクール構想により導入された学習用端末は、スペック維持のために5年程度で入れ替えが行われる予定となっており、早い学校は2024年度から、多くの学校は2025年度から2026年度にかけてリプレース(置き換え)が本格化します。これらの入れ替え作業も、現場の負担増になります。

また、ICT教育を進める中で、インターネットを利用中の児童生徒が、インターネット犯罪やSNSいじめなどのトラブルに巻き込まれる可能性もリスクの1つ。
ICT教育では、端末の操作方法やソフトウェアの使い方を学ぶとともに、インターネット上での振る舞い方や個人情報の守り方といったネットリテラシーを高めていくことも重要な目標です。
トラブル防止のための指導は十分に行った上で、万が一トラブルが発生した場合に備えて、法的な相談窓口の整備や警察組織との連携など具体的な対策を練っておく必要があります。

GIGAスクール構想の事例 具体的な取り組みはどんなことをしている?

GIGAスクール構想の目的や内容は理解したものの、1人1台端末やインターネット環境が学校の授業でどのように活用されているのか見えにくいと感じる保護者の方も多いでしょう。
個別具体的な事例は、各自治体の学校・クラスごとに異なるものの、GIGAスクール構想を受けて始まったICT教育では、以下のような活動事例が報告として挙がっています。

情報収集への活用事例

情報収集への活用

  • インターネットの検索サイトを活用し、情報の収集方法と正誤判断、取捨選択のスキルを学ぶ
  • 端末のカメラで教科書のQRコードを読み、関連した写真や動画を確認
  • 写真や動画を撮影し、細部の観察や実験結果の確認

表現活動や創作への活用事例

表現活動や創作への活用

  • 動画編集ソフトを利用して映像作品を制作
  • プログラミングで動きのある作品やミニゲーム等を制作

思考整理への活用事例

思考整理への活用

  • プレゼンテーションソフトを利用してグラフや図などの資料を制作し、発表に利用
  • 作成した文書・画像・動画などを個人フォルダにまとめ、学習成果を蓄積・共有
  • デジタル付箋やチャート図を利用して情報や考えの整理、集団の意見をまとめる

学習理解への活用事例

学習理解への活用

  • アニメーションを使って漢字の筆順や図形の展開図などを確認
  • 英語の音の確認や発音練習
  • 合唱でパート別の音の確認や個人のくり返し練習に利用
  • 自動丸付け機能のある計算ドリルを使った反復学習

ICT活用技術全般の向上

ICT活用技術全般の向上

  • タイピング練習によるキータッチ速度の向上
  • ビデオ会議ソフトを利用したオンライン授業や専門家・地域の人との双方向学習や交流
  • 二画面表示機能で実験の経過などを観察
  • 画面共有機能を使って個人の意見をグループに共有し、ブラッシュアップに活用

※参考)

GIGAスクール構想の現状と課題は?

2024年時点でGIGAスクール構想は実施から4年目(早い学校では5年目)を迎えています。
文部科学省の調査によると、令和3年3月末時点で全国の公立小中学校等で端末整備が終了しているのは全体の96.5%(見込み含む)、校内通信ネットワークに関しては97.9%が整備を終えています(同)。
GIGAスクール構想の根幹とも言える1人1台端末と通信ネットワークの整備については、ほぼ終了していると言えるでしょう

2024年度からは、端末の更新時期に入る学校も出てくるため、端末故障やバッテリー劣化といった不具合を解消するための端末のリプレイス(置き換え)作業がはじまると同時に、ICT教育のさらなる進化を目指していく段階に入ります。

これらの取り組みは「NEXT GIGA(ネクスト・ギガ)」とも呼ばれ、引き続きICTを学校教育に活用していくとともに、教育現場をサポートする「GIGA StuDX(ギガ スタディーエックス)推進チーム」の本格始動や、従来のGIGAスクール構想では触れられなかったポイント(児童生徒の目の健康に配慮した学習用端末の使い方、保護者等と共有しておくべき端末の使用ルール等)についても提言がなされています

GIGAスクール構想とNEXT GIGAの施策を受けて保護者側が心がけることとしては、学校側から提示される端末の取り扱いに関する同意事項について内容を理解すること、さらに、子供が学習用端末を自宅に持ち帰った場合の使い方(使用時間、アクセス先など)や管理方法(故障の原因となる扱いをしていないか)等について注意することなどが挙げられるでしょう。

GIGAスクール構想の課題とは

スタートから2024年で5年目を迎えるGIGAスクール構想ですが、これからクリアしていくべき課題も残っています。

  • 学校間の端末およびネットワーク整備の格差
  • 指導教員の不足
  • 家庭ごとのICT環境の格差

全国の学校を対象として進められているGIGAスクール構想ですが、文部科学省の調査によると、端末と通信ネットワークの整備状況は、自治体(学校)による差が見られます。
端末の納品やネットワーク整備が遅れる場合、ICT教育のスタートや充実化にも時間がかかることが予測され、教育格差がかえって拡大してしまう可能性も考えられるでしょう。

ハードウェア面での格差に加えて、ITスキルを持つ指導者の不足や教師のITスキルの格差も課題の一つです。
対策として、職員のIT研修を実施するほか、ICT活用教育アドバイザーによる自治体支援、文部科学省の「GIGA StuDX推進チーム」による情報発信や現状のヒアリング、各自治体の教育委員会の連携などで支援体制を広げていくことが計画されています。

また、家庭ごとのICT環境に格差がある点も課題です。通信ネットワークの整備状況や学習環境は各家庭によって異なり、Wi-Fiのない家庭であれば、子供が端末を持ち帰っても学習に活かすことができません。
他にも、「調べ学習」で親のサポートを受けられる児童生徒と受けられない児童生徒に分かれるケースもあり、ICTを家庭での自主学習に活用する際は、家庭との連携や保護者との認識のすり合わせが必要になります。

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