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体を動かすと頭が良くなる?運動と勉強の意外な関係を脳科学で解説

学習関連コラム Written By Written By プラスニ編集部

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「運動は勉強の妨げになる」――こうしたイメージを持っている保護者の方もいるでしょう。

ですが、実は近年、「運動と学力は無関係どころか、むしろ良い影響がある」という研究結果が多数発表されています。

たとえば、文部科学省の調査によると、運動習慣がある児童・生徒のほうが、学力テストの平均点が高い傾向があるとのこと。特に、「記憶力」や「集中力」「自己肯定感」といった学習に必要な「非認知能力」の向上に運動が関係していると言われています。

また、世界的にも「運動が学力に良い影響を与えること」は注目されており、アメリカや北欧諸国では、授業前に軽い運動を取り入れる学校も増えています。

そこで、本特集では「運動と勉強の関係」に注目し、脳科学の観点からわかりやすく解説。さらに、学習効率を高めるためのヒントをご紹介します。

脳科学で見る「運動と勉強の関係」

白衣を着て考えている様子の男の子

運動が脳に良い影響を与えることは、近年の脳科学の研究で次々と明らかになっています。

そのなかで特に注目されているのが、BDNF(脳由来神経栄養因子)という物質です。BDNFは脳内で神経細胞の成長や再生を促す役割を担っており、記憶力や学習能力、感情の安定に深く関わっています。

筑波大学や神戸大学などの研究によると、中強度の有酸素運動を行うと、このBDNFの分泌量が増加し、認知機能が一時的に向上することが確認されています。さらに、もともと認知機能の低かった児童ほど、運動後に大きな改善が見られたという報告も。運動の"脳への恩恵"はすべての子どもにあるだけでなく、課題を抱える子ほど効果的である可能性が示唆されています【筑波大学研究より】。

また、九州大学健康科学センターの文献によると、運動によって分泌されるBDNFは、海馬(記憶を司る部位)や前頭前野(思考や集中力を司る)の働きと関連し、学習時の記憶の定着や集中力の維持を助ける作用があるとしています。特に、中等度の運動(軽いジョギングなど)を週数回行う習慣が、BDNF分泌を安定して高めるとのこと。

さらに、運動はBDNF以外にも、セロトニン(心の安定に関わる)やドーパミン(やる気に関わる)の分泌を促し、学習に向かう精神状態を整える効果があります。

つまり、運動は単に体力をつけるためのものではなく、脳の"学習モード"を整えるスイッチとしても働いているのです。

参考)習慣的運動は子供の脳の発達を促す~認知機能の~個人差によって異なる運動の効果

参考)九州大学健康科学センター文献

実際に学力アップに効果がある運動は?

運動が勉強に良い影響を与えることは分かってきましたが、どんな運動が勉強に効果的なのか?は、保護者にとって気になるところです。

脳機能の向上にとくに効果的とされているのが、中強度の有酸素運動です。代表的なのは、ウォーキング、ジョギング、なわとび、サイクリング、水泳など。これらの運動は心拍数を軽く上げながら、継続的に酸素を取り込むため、脳への血流を増やし、BDNFの分泌を高めることがわかっています。

ウォーキングをする男の子のイラスト

たとえば、筑波大学などの研究では、20分程度の軽い有酸素運動の後に記憶テストの成績が向上したというデータがあり、特に「思考」「集中」「記憶保持」を高める前頭前野や海馬への好影響が示唆されています。

また、短時間の筋トレやストレッチは集中力の回復に効果的。椅子に座ったままでもできるスクワットや体幹トレーニング、簡単なヨガポーズなども、長時間の学習による脳の疲れをリセットする効果があります。

さらに、最近注目されている、「エクサゲーム(運動型ゲーム)」も良いでしょう。たとえば、Nintendo Switchの『リングフィット アドベンチャー』や、ダンス系アプリなどを使えば、ゲーム感覚で有酸素運動ができるため、運動が苦手な子どもでも楽しく体を動かせます。

なお、重要なのは、「きつすぎず、継続しやすい」運動を取り入れること。子どもの性格や生活リズムに合った運動を、毎日10〜20分でもいいので続けることが、学習力アップのカギになります。

勉強効果が高まる運動の時間帯とタイミング

運動が勉強に効果的とされる中で、「どの時間帯に運動をするのが最も効果的か」という視点も重要なポイント。実は、脳の働きや体内リズムに合わせて運動をすることで、学習効率をより高められます

朝の軽い運動で脳を"起動"する

人間の場合、朝起きてすぐに軽い運動をすると、眠っていた脳が活性化し、スムーズに勉強モードに入れるのです。

また、筑波大学の研究によると、朝に運動を取り入れた児童は、その後の授業において集中力が持続しやすく、テストの成績も向上傾向にあったと報告されています。

ちなみに、体を動かすことで交感神経が活性化するため、気持ちも前向きになります。これは、「やる気が出ない朝」のリセットにもなるため、朝に勉強する習慣づけにも効果的です。

勉強の合間に「運動休憩」を入れる

勉強の集中力が途切れてしまうのは自然なことですが、ただ休憩するのではなく、「動きのある休憩(アクティブ・レスト)」を取り入れることで、より効率よく脳をリセットできます。

たとえば、勉強と勉強の間に5〜10分程度の軽い運動(ジャンプ・スクワット・その場足踏みなど)を挟むだけでも、脳内の血流が改善し、注意力や集中力が復活することが多くの研究で示されています。

アメリカの学校でも、50分の授業の合間にミニ運動(ブレイクタイム)を入れる試みが広がっており、「再集中にかかる時間が短くなった」「理解度が上がった」という報告も。日本の学校や塾でも、最近は「運動休憩」を導入しているケースが増えています。

ちなみに、休憩中に行う運動は、椅子に座ったままでもできる簡単なストレッチや体操でも効果があるので、自宅学習の合間に親子で取り入れてみるのもおすすめです。

夕方〜夜はリラックス目的で運動する

夕方〜夜の時間帯は、交感神経から副交感神経へと切り替わるタイミング。つまり、体と心をリラックス状態へ導くのに適しています。そうした時間に、激しすぎないリズム運動やストレッチ、ヨガなどを行うと、睡眠の質が向上するというデータがあります。

睡眠は、勉強した内容を脳内に定着させる非常に重要なプロセス。夜にしっかり眠れていないと、記憶の整理がうまくいかず、翌日の学習効率にも影響が出てしまいます。そのため、運動を「勉強のための準備」だけでなく「勉強の結果を定着させる補助」として考えることも重要です。

実際、早稲田大学の研究によると、就寝前に15分程度のゆったりした運動を取り入れると、入眠がスムーズになり、翌日の認知機能にも良い影響があったと報告されています。

時間帯や目的を考慮して運動を行うことで、より高い学習効果が期待できます。「運動×勉強」の効果を高めたい場合は、運動を行うタイミングやその目的もしっかりと把握しておきましょう。

FAQ

運動と勉強、どちらを優先すべき?

運動と勉強のどちらかを優先させるのではなく、両方を上手く組み合わせて考えるのがポイントです。

運動をすると脳が活性化し、集中力や記憶力が向上することが科学的に証明されています。勉強の前や合間に軽く運動をすると、むしろ学習効率は向上するのです。

そのため、「運動=勉強時間のロス」ではなく、「運動=学習の準備」と捉えるのがおすすめです。

運動のしすぎで疲れてしまい、勉強に集中できなくなることは?

激しい運動の直後は一時的に疲労が残ることもありますが、運動の程度を調整すれば問題ありません。たとえば、全力のランニングや長時間のスポーツの直後には、短時間の休憩を入れてから勉強に取り組むと効果的です。

ただ、日常的には「中強度の有酸素運動(軽いジョギング、なわとび、体操など)」を10〜20分程度取り入れるのが最もバランスが良いとされています。

運動が苦手な子にも効果はある?

はい、運動の種類に関係なく、勉強への効果は期待できます。

もともと認知機能が低かった子どもほど、運動による改善効果が大きかったという研究結果もあります。ちなみに、行う運動は、ストレッチやラジオ体操、リズム運動、さらにはゲーム感覚の「エクサゲーム」など、楽しく続けられるものであれば十分です。特に、運動に苦手意識がある子の場合、"遊びながら楽しくできる運動を上手く取り入れると良いでしょう。

どのくらいの頻度で運動するのが良い?

毎日10〜20分程度の軽い運動を継続できるのが理想的です。

厚生労働省のガイドラインによると、子どもの場合「1日60分以上の身体活動が望ましい」とされていますが、学習効果を目的とする場合は短時間でも問題ありません。大切なのは"無理なく続けられる"こと。勉強と同じく、運動も「習慣化」が最大のポイントです。

運動は、学力を支える"もう一つの学び"

運動というと「体を鍛えるもの」というイメージが強いかもしれません。ですが、運動は"脳の力"を育てるうえでも欠かせない存在だということが、近年の研究や教育現場での実践からわかってきています。

記憶力や集中力を高める物質の分泌を促したり、メンタルを整えたり――。運動は、目に見えない形で子どもたちの"学ぶ力"を支えているのです。

朝の5分間のストレッチや、勉強の合間のちょっとした体操、親子で楽しむゲーム型エクササイズ……そうした小さな積み重ねがが、やがて大きな変化につながります

子どもが「なかなか集中できない」「勉強が続かない」と感じているとき、それは"がんばりが足りない"のではなく、"勉強のためのエネルギーが足りていない"サインかもしれません。

そうしたときこそ、運動を取り入れてみるチャンスです。

ぜひ本特集を参考に、運動と勉強の関係をチェックし、子どもの日々の学習に役立ててみてください。

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